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【速報】英語民間試験、導入を延期!

11月1日、ちょうど「共通ID」の申請が開始される日になりますが、「大学入試英語成績提供システム」で活用される予定だった英語民間試験の導入が延期となりました。様々な批判の中、推し進めてきた大学入試改革の目玉となるこの施策が、急転直下、延期となりました。
どうして、このシステムが延期になったのか、この方向転換による影響を考えていきたいと思います。

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問題点① 公平性について

一番批判にさらされていたのは、現行のセンター試験に対して、民間試験が受験者の地域性や経済力により、受験機会と回数において有利不利がはっきりと出てくることでした。
離島や地方都市では、受験会場までの旅費は場合によっては泊りがけでの受験を余儀なくされ、一方で都心部であれば、受験会場の選択肢も多くなり、受験機会そのものに大きな不公平さがありました。さらに、受験会場へ行く手段を確保できたとして、希望日、また希望地で希望のテストを受けられる保証はありませんでした。民間試験の中でも多くの受験者が受験することが予想され、有力な選択肢の一つだったGTECに至っては、受験地の発表が文科省が定めた期限の前日(10月31日)に発表するという体たらくです。
さらに、試験の受験料も5800円~25800円と開きがあり、高額なテストに関してはそれこそ経済力の差が、受験回数の差につながります。一般的に試験というものは同程度の問題であれば、受験回数が多いほうが、時間配分や、会場の雰囲気に対する慣れが出てくるため、有利であることは間違いがありません
これら問題は以前からも指摘されたていたことであり、各民間試験は全国各地での受験会場の設置や受験回数の調整、申込を2段階にして受験者数の把握に努めたりと、様々な方策を取ってきましたが、結局理解を得られることは難しく、その内容が明らかになるにつれて、批判の声がどんどんと大きくなってきました。

問題点② テストの質

もう一つの問題は、やはりテストの質という点です。そもそも目的が違うテストをひっくるめて、CEFRの指標に合わせてレベルを決めるという立て付けに無理がありました

果たして、この表の信ぴょう性は誰が担保するのか。

CEFRはそもそも日本人の英語の力を判断するため (もともとはヨーロッパの第2言語者向け) に作られたわけではなく、さらに、一応の理由づけはあるものの、各試験のスコアと、CEFRのレベルのマッチングの根拠については、各民間試験任せという、非常に形式的なものでした。

また、GTEC、TOEFL、英検(旺文社)の3試験については、試験の対策本をそのテストの実施団体(関連会社)が出版するという、利益相反ともとられない方策を取っていたことも、テスト内容の公平性という点については、大いに問題がありました。

少し古い内容(TOEICがあります)ですが…。

さらに当日の運営において、試験監督の指導や実施マニュアルにも不安がありました。センター試験のテスト監督マニュアルは200ページ越えの冊子が配布され、水も漏らさぬ仕様です。そこまでのマニュアルを各民間試験が創っていたかというと、その点においても不安がある運営状況でした。
また日々、英検やTOEFLなどの資格試験の指導に当たっているものとして、特に記述式の採点の点数のばらつきに対しては、常に不公平さを感じていました。英検については、採点者の素性、人数が公表されておらず、場合によっては、複数の文法ミスがあっても満点に近い点数が出ることもあれば、かなりきれいにまとめた文章でも点数が伸びなかったりと、採点基準については懐疑的な点は否めませんでした。
このように、民間試験そのものの質も、多くの受験生の人生を決める試験という観点から見ると、まだまだ体制づくりは不十分だったと言えます。

一番の被害者は受験生。

今回の延期で一番の被害者は受験生です。特に受験の初年度生にあたる高校2年生はもちろんのこと、高3生においても、目前に迫った大学入試と並行して、浪人した時のことも考えて予約申し込みをどうするかなど、かなり気を使っていたはずです。 実際にこの「英語成績提供システム」を使った英語の試験の開始は来年4月以降でしたが、多くの方がご存じの通り、英検S-CBTの申込はすでにはじまっていましたので、高2生の多くの方は申込をされた方も多かったと思います。この予約申込には、予約金として3,000円が必要でしたので、全額返金されるかどうかも含め、これからの対応になります。そして何よりも、 どの試験を受けるか調べた時間、 試験の申込に費やした時間、試験勉強に費やした時間、これらの時間は決して戻ってきません。もちろん英語の勉強自体は無駄になることはないと思いますが、そこはやはり特定の試験対策における勉強方法と、ジェネラルな英語学習方法では、やり方も重視する内容も変わります。しっかりと準備に時間を使った人ほど、その代償は大きくなります。

今後の展望

現段階でわかっている範囲では、来年2020年度からの実施は見送られることは確実です。その後、この英語民間試験が活用されるかどうかは、2024年をめどという文言がありましたが、どの段階で導入を検討するか、またこのまま立ち消えるのかは今のところ不明です。
また、英語民間試験の導入は先送りにされましたが、同時に実施予定だった、センター試験に代わる「大学入試共通テスト」は実施されます。また合わせて実施予定である、国語の記述(数学については数式のみ)式問題に関しても、実施されます。「英語成績提供システム」の英語民間試験導入は延期になりましたが、大学入試改革における変化のすべてがなくなるわけではありませんので、現在高2、高3生の方は注意をしておいてください。
 1年かけて検証をして、今後この英語民間試験を共通テストに変えて実施するかどうかに関しては、また発表があるかと思いますが、今回の教訓をもとに、多くの方が納得のいく大学入試にしていただきたいところです。

延期されたこと

〇英語民間試験を使った「大学入試英語成績提供システム」
〇上記システムにおいて必要となる「共通ID」(現在申請がストップしています)

このまま続行するもの

〇大学入試共通テストの実施(英語の試験がこれまでのセンター試験と違い、リーディング100点、リスニング100点での配点形式)
〇上記テストにおける、国語における記述式問題の実施
〇学習指導要領の変更。2020年から順次、小→中→高と実施されます。

この問題、だれが最終責任者?

先ほど、一番の被害者は受験者と伝えましたが、その責任自体は、民間試験の導入ありきでこの改革を進めてきた文科省にあることは間違いがありません。そしてその流れには官民の癒着の影が消えることはありません
年間50万人を超える受験者がいるセンター試験を、同等の受験の必然性があるテストと銘打って年2回にして受験させることで、民間試験に約100万人の受験者が加算されることになります。1回の試験が6000円だったとしても、60億のお金が試験を実施する民間企業に流れます。またその受験のために多くのテスト対策の本が売れることになります。安く見積もって一冊1,500円、それを半分の受験者が購入したとしても、7億5000万円という巨大な市場を作り出すことになります。以前の記事にも書きましたが、ベネッセグループの業者が国語の採点を落札した経緯からも、特定の業者に国が主導して利益が流れるということは、あってはならないことだと思います。

試験実施団体への同情…

振り回されたのは、受験者だけではありません。いかに受験者が増えて将来的には受験料が入ってくるとはいえ、公平な実施をできるようにこれまで準備をしてきた民間業者も部分的に同情の余地があると思われます。
今回の民間試験の導入に対して、最も積極的に設備投資を行い、他の試験実施団体に先んじて手を打ってきたのは英検協会でしょう。ただ、先に述べた通り、3,000円の予約金は返金をしないといけません。もともと手数料を差し引いてとなっていましたが、今回は受験者の希望による返金ではなく、実施側の親玉ともいえる文科省からの通達による中止になるため、返金のための手数料を受験申込者からもらうわけにはいかない。そうなると、もし30万人の返金手数料を英検協会が負担するとなれば、800円×30万人として、2億4000万円の返金手数料がのしかかってきます。当然国が負担すべきですが、そうなると税金を使うのかと、また非難されることになります。また、すでに英検協会のホームページにも出ていますが、試験会場となるテストセンターの契約、什器備品の購入、システム導入など、かなり具体的に事を進めてきていた様子がうかがえます。受験者が不利益を被らないようにと、先手先手を打ってきた英検協会が大損をするというのも、どうなのかという気持ちにならなくはありません。こういった準備がすべて、この1年は無駄になるため、英検協会が受ける金銭的なダメージは小さなものではなないでしょう。そして、その負担が、今度はこれからの受験者に、受験料の値上げという形で降りかかってくることも覚悟しなければなりません。

英語力を高める目的とは…。

最後に、今回の大学入試改革で英語の民間試験を導入した背景には、日本人が苦手とする「話す」「書く」を含めた4技能をよりよく伸ばすために、出口である大学入試を変えれば、学校教育が変わり、結果英語ができる日本人が増えるだろうという短絡的な考えがあります。英語力を高めること自体に異論はありませんし、AIEとしても国際人育成の過程において、世界を舞台に活躍できる人材の条件に語学の力はあると考えています。ただし、言語の力はあくまで全体から見れば部分です。語学ができればそれだけで立派な人であるかといわれると、答えはNoです。そして、今回の改革のように、大学入試を変えるという「手段」が「目的」となった改革はどこかに無理があり、その無理の歪が今回のような結果につながったのだと思います。
今の日本社会には受験というシステムがある以上、それらに対応した英語の力を身に付けたいという思いは当然であり、それに応えることもAIEの使命の一つですが、受験より先の世界で、純粋に英語を使って人生を豊かにしてほしいと願います。

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