新しい英検の級の名前は、「準2級 プラス」です!
先ほど英検協会から速報が来ました。
2025年から導入される英検準2級と2級の間に位置する級の名前が「準2級 プラス(英語表記:Grade Pre-2 Plus)」に決まったとのことでした。
この導入の理由は以下の通りです。
前提:英検はこれまで、高校1年生で準2級、高校卒業時に2級の取得を目標としたレベル設定をしてきた
✓確実にCEFR の「Independent User」に近づきつつあることを証明し、学習者の意欲や自信を高める
✓準2級と2級のギャップを埋めることで、学習者に身近な目標を提供する
✓小さな成功体験の機会を提供することで、学習者のモチベーションの維持・向上を図る
✓「高校生の学び」に寄り添い、高校2年生にふさわしい英語力が身につけられていることを客観的に示す
なぜここに新級を設置するのか?
簡潔に言えば、準2級と2級のギャップが大きくて、合格者が少なくなるので、その間を埋めるようにし設置しますということでしょうか。大学入試を考えると、GMARTCH、関関同立レベル以上であれば英検2級レベルは必須であり、2級と準2級の間に作ったとしても、準2級プラスを所持することが与える影響はそこまで感じません。大学側が総合型・学校推薦型選抜の出願基準を設けるために、基準を細分化すると作業が煩雑になるため、結局従来通り2級をの出願基準にしそうな気がします。
実際の運用を考えると、2級と準1級のギャップの差の方が圧倒的に大きいでしょう。もちろん準2級と2級の差があることはわかりますが、それは当然乗り越えるべき階段であり、出題される単語レベルで比べてみても、準2級3600単語⇒2級5100単語でプラス1500単語で妥当です。現状の共通テストも2級レベルを中心基準として作成されていると感じられます。
それよりも2級5100単語⇒1級の9000単語の4100単語のジャンプアップの方が、厳しくなります。海外滞在経験がなく日本で英語を学んだ方であれば、2級と準1級のギャップを埋められるかどうかが上位の大学(早慶上智以上、国公立合格かどうか)に強く影響を与えます。ですので準2級から2級の間をどうこうするのではなく先に2級と準1級をどうにかしようとするのが、大事かと思います。
それでも「準2級プラス」を創る理由
ここからは邪推です。準2級と2級の間に新しい級をつくる理由。それは英検協会の商品を増やすためです。英語を教える者として、ここ8年程の英検ブームは驚かされます。全く英検について何も知らない方も、英検を受けるにはどうしたらいいか、聞いてこられます。中には、周りのみんなが4級を受けるから、初心者なのに4級を受けますと言ってこられた方もおられました。この英検ブームの理由の一つに、「英検が大学入試と同意になった」という事実は見逃すことはできません。2023年の時点で私立大学の約50%の入学者が、一般入試ではなく、総合型選抜・学校推薦線型選抜を利用して大学に入学しています。その際に最も使われた英語の試験は間違いなく英検です。これは他の教科にも実用数学技能検定(数検・算数検定)、日本漢字能力検定 (漢検)、日本語検定 (語検)、歴史能力検定 (歴検)、実用理科技能検定と本当にたくさんの検定試験がありますが、それらが大学入試の代わりになったという例は、ほとんど聞きません(実際にはあるようですが、大々的にアピールされることはありません)。数学なら、何故か数学オリンピックでのメダル獲得など、一気にハードルが上がります。
つまり現状では、英検は各種検定の中でも大学入試においては最も優遇され、多くの人が受けたくなる試験ということです。
一方で、少子化の波が確実に来ています。今から8年前と言いましたが、8年前ぐらいから英検協会があることを辞めました。それは、各受験回の受験者数と合格率の発表です。私の記憶でも、キャンパス内での英検講座の需要、英検の受験者数が一気に増えました。これには当時言われていた共通テストの英語を廃止し4技能試験に移行するという流れもあったと思います。しかし一度は英検ブームに乗って増えた受験者も、実際に英検を必要とする子どもの絶対数が減ることにより、受験者数も減ります。大学進学率が上がっても、共通テストの受験者が近年毎年減っているのも同じですね。需要の上昇よりも、絶対的な分母の減少の方が影響が大きいことを表しています。
そこで、新しい級の設置です。多くの人は準2級と2級の間に新しい級が出来たら、それを飛ばして2級を受けようとはしません。確実にステップアップのために受験者が増えます。それが1級の上の級や5級の下に6級や7級を創らない理由です。大学入試で多くの人が必要になる、そして需要の高い2級の手前に置くことで、受験者を増やせる、これが英検協会の描いたシナリオかもしれません。
英検に期待すること
なんとなく英検協会を悪く言う書き方ですが、英検自体はとてもいいテスト考えています。ほかのTOEIC、TOEFLといった英語テストと違い(TOEFL Primaryがあることは知っていますが…)、英語を始めたばかりのラーナーも受験することができます。一方でその英検が持つ力が、実質的な大学入試となっている背景もあり、過大に振るわれている印象もあります。
だからこそ、現状の英検に対しては、ライティングの採点システムの精度向上や2名以上の採点官による採点の導入、英検2次試験での試験官のレベルアップなど、費用を掛けてほしい点がたくさんあります。今回の準2級プラスの導入が英語を学ぶ人々にとって良い影響をもたらすように、願っています。
最後に大事なことを…
①導入は2025年度予定です。今年(2024年)は従来通りです。
②必ず準2級の次に準2級プラスを受験する必要があるわけではありません。これまで通り、準2級から2級にステップアップしても問題ありません。
③準2級プラスのCan Doリストが出ていません。そのため具体的な英語力のレベルがわかりません。一方で上記の記載を見る限り、前後級となる準2級、2級については難易度変更はないはずですが、これも新しく見直される可能性があります。