正答数? CSEスコア? 英検の採点方法を解説します!
第2回の英検が終わりました。問題用紙にチェックをつけている方は、回答も出ていますので、自己採点をされている方も多いと思います。今回は英検独特のCSEスコアによる採点について、解説したいと思います。いろいろと誤解も多いので、英検の合否判定に使われるCSEスコアを、正答数から出す方法について、見ていきましょう!
【CSEスコア方式】
CSEスコアについては、2015年から取り入れられた方式です。いわゆるTOEICなどと同じで、素点(各セクションの問題の正答数)がそのまま点数になるのではなく、素点をCSEスコアに換算し、そのスコアを合計して合否を出すというものです。そして大事なことは、この素点をCSEスコアに換算するときのレート(素点●点がCSEスコアの●点となる換算基準)が、英検の受験回(正確には一つの回の中でも日程が異なると、その日程ごとによって異なります)によって、毎回変わるというものです。
そして、以前のように正答数が全体のうち何%だから合格、不合格、ということは、CSEスコア方式になってからはあまり意味がなくなりました。にもかかわらず、今回の旺文社さんの自己採点システムでも60%を合格ラインに出しているので、ちょっと困ったことになっています。ちなみにCSEスコアの得点率でみても、4級以上は60%を余裕で超え、準1級に関しては79%です。
【合否について知ろう!】
具体的なCSEスコアとについては上の表をご覧ください。S-CBTでも従来型でも同じですが、英検の合否判定においては、1次試験(R/L/W)のスコアと2次試験(S)のスコアの両方が基準点を超える必要があります。また基本的に1次試験を合格したうえで2次試験の合否判定が行われます。これは同日にR/L/W/Sを同時に行うS-CBTでも変わりません。例えば2級を例にあげると、1次試験の合格点が1520点、2次試験の合格点が460点、合計1980点取得で2級取得となっていますが、例えば各セクションを500点ずつ取った場合、合計は2000点で基準の1980点を超えていますが、2級取得ではありません、R/W/Lの合計点が1500点のため、1次試験合格点の1520点を満たしていないからです。この場合1次試験不合格、2次試験合格というステータスでS-CBTのスコアに表記されます(当然ながら、従来型の場合は1次試験を合格した人しか2次試験を受けることができないので、上記のような1次試験不合格、2次試験合格というステータスは起こりえません)。
【素点→CSEスコアの換算点の方程式は存在するのか?】
さて、ここからが本題です。諸々、誤解が多くなっている気がするため、今のところ英検協会から発表されている内容も含めて、スコアリングについてみていきましょう。
正答率が60%を超えれば合格できる?
先に述べた通り、旺文社も60%を合格ラインと設定しています。また得点率も余裕で60%を超えています。これは正しいはず…といいたいところですが、不正解です。もっと言えば、正答率が60%より低くてもCSEスコアが基準を超えていれば合格します。つまり、正答率ではなく、その正解数に対していくつのCSEスコアが割り振られ、それにより合格スコアを超えるかどうかが大事です。
いつも使う図ですが、これを見ていただくとわかるように、正答率が低くても合格していますね。ただし、これは2024年のライティング改定が入る前のもので、ライティングの1点の重みが今よりも圧倒的に重たかったためによく起こっていました。2024年1月からの改定では、各セクションの問題数がほぼ同数になりましたので、今後はこのようなことは起こりにくくなる(以下の図を参照)と思われます。
正解する問題によって、CSEスコアが変わるのか?
、「例えばリーディンセクション内で、正解する問題、不正解する問題に応じて、最終的に同じ6割正解でもCSEスコアが変わる」という内容であればそれは間違いです。例えば3級ではリーディングは大問3つに分かれ、それぞれ大問1が15問、大問2が5問、大問3が10問ありますが、大門①を全問正解して15点取った人と、大問②と③を正解して15点とった人の点数が違うということはありません。
英検の同じ回、同じ曜日のテストにおいて、どの問題を正解しようが、間違えようが、素点に対応したCSEスコアが割り振られます。例えば2024年の第1回から3級のライティングが2問になりました。1問目のEmail問題は素点が9点(3点×3観点)、2問目の意見論述問題が素点が16点(4点×4観点)です。たまたまEmail問題が0点で、意見論述が満点だった生徒さんがおり、合計点が16点だったのですが、その生徒さんと、Emailが7点、意見論述が9点だった生徒さん、こちらも合計点が16点だったのですが、二人ともともCSEスコアは373点で同じでした。
これは私自身も気になっていたところで、Emailと意見論述、それぞれ満点に対してCSEスコアの限界点が与えられており(例えばEmailが200点、意見論述が350点など)、その中で各点数の割り当てがされるのかな、と思っていたのですが、そうではなく、あくまで2つのスコアの合計点に対して、CSEスコアが振られる形式のようでした。
CSEスコアの出し方には方程式がある?
リーディングのCSEスコア換算 正答数×6.8+264
※450点以上の場合は+15点
※350点以下の場合+5点
リスニングのCSEスコア換算 正答数×8+216
※440点以上の場合は+20点
ライティングのCSEスコア換算 点数×24+130
大変研究熱心な保護者の方が3級のスコアについて上記の方程式を生み出されていました! 結論から言うと、かなり近いのですが、一部補足が必要と思っております。これは表を見ていただくとわかりやすいので見てみましょう。3級、過去12回(最新の2024年第1回を含む)の結果を表にしたものです。基本的に3級のリーディングとリスニングは2017年から問題数が変わっていないので、精度を上げるために以前の回のものも入れています。
26問正解から差がどんどん大きくなります。実は英検のスコアリングにおいて重要点として、満点に近づくほど、1点に対するCSEスコアの伸びが極端に大きくなる現象があります。そもそも元の方程式にも、450点という閾値はありましたが、基本的には1次関数です。直線的に伸びるものですね(図1のグレーの線のイメージ)。ですが、実態はもう少しうねっているというか、オレンジの線(過去12回のスコアの平均値)のようになります。いわゆる多くの受験者がスコアをするであろう、ボリュームゾーンに対しては素点1点当たりのCSEスコアの変動が小さくなり、ほぼ満点といわれる27点をこえるあたりから、素点1点当たりのCSEスコアの伸びが大きくなります。これが一つのセクションでも満点を取れれば相当有利になるという理由であり、得意なものを伸ばす作戦が英検においてワークしやすいという所以です。
上記にボリュームゾーンという言葉ありましたので、大体素点で何点取れば、合格CSEスコアを均等に3セクションで割り、合格するに必要なCSEスコア点数になるかをまとめた表が以下の表です。まだ新形式になってからは1回分しか取れていませんが、それ以前のものは、15回分の平均値になります。
ライティングは全く異なるスコアになっているので方程式をうのみにするのは危険です。16点満点だった時であれば、なんとなく合いそうですが、今は25点満点ですので、係数をちょっと減らしたほうがいい感じです。実際は素点×15+130位(方程式B)でボリュームゾーンは合いそうですが、これも上位の点数になるほど、離れてしまいますね。
ただし実際に合格出来るように勉強をしていく際には、各セクションをまんべんなくとるのではなく、どこかが得意でどこかが苦手という方が多いと思います。合格予想点を取れるレベルまで苦手なセクションが伸びたら、得意なところを伸ばしたほうが合格には近づけると思います。あくまで平均的に取る場合の参考にしてください。
3級のライティング(意見論述)の採点目安がある?
先ほどの保護者の方がさらに以下のような分析をされていました。もはや英語スクールをスタートされたほうが良いレベルの分析です。とはいえ…ここは受験者が多い英語スクールとして、精度を高めたいと思います!太字のハイライトのところが私の追記です。
①内容 → おおむねその通りと思われます。単語数が制限の35単語を相当超える、また著しく少ないと、この内容点か、構成点が引かれることがあります。少々の文字数オーバーの場合はあまり引かれている印象はありません。ただし、2級以上の要約問題では、文字数を超えるのは絶対にダメです。要約という短くするための問題で、文字制限より長いのは必ずペナルティーが科されます。
●良い理由が2つで4点満点
●以下の理由は1つにつき-1点 →
・単に「好きだから」など
・関係ない理由
・2つとも似た理由
②構成 → 3級においては構成はあってないようなもの。ですが、①段落目:イントロ、②段落目:ボディ1、③段落目:ボディ②は基本です。ディスコースマーカーはあまり重要視されていません。
●接続詞等により論理的な構成は4点満点
●関係ないことに話しが飛ぶと-1点
③語彙 → スペルミスがあっても減点はされないこともあります。逆に上位級になると、スペルミスがなくても、適語でない、簡単な単語を繰り返し使うことにより、点数を引かれるケースがあります。
●綴りや使い方が正しいと4点満点
●小さなスぺルミス1~2個は-1点
●原型不明なスぺルミス1~2個は-2点
④文法 → ここが最も解釈が別れる点です。
●文法ミスなしで4点満点 → 文法間違い3か所でも満点の実績あり。ミスがないことが満点の条件ということはありません。
●文法ミスでも意味分かるのは-1点
・I like play soccer.など → 基本的に文型崩れの場合、確実に減点されているイメージです。
●意味が読み取れない文は-2点
文法ミスでの減点は、品詞、冠詞ぬけ、前置詞ミス程度のレベルの間違いの場合、どうもトータルの間違い数との兼ね合いで点数が引かれているようです。そのため文法ミスが一つでもあると満点が取れないかというとそうではないです。ただし、文型が完全に崩れている文章は点数がしっかりと減らされています。
極論をいえば、ライティングの点数は相当怪しい(同一回の中でも採点者によるばらつきが多い。一部AIで採点していると言われているが、とてもではないが毎回同じ精度とは思えない。)と思っています。文法、スペルミスがなく、点数の引きようがなくても満点をもらえないこともあります(特に上位級が顕著)。これは、準1級としてふさわしい文法、語彙を使えていないという、どうしようもない理由によるもの。じゃあ、準1にふさわしい文法、語彙とは何か?となりますが、これについては述べられていないので、できるだけ文法のバリエーションを増やし、構文を駆使して書くしかありません。
まとめです。
①英検の合否は、正答率よりも各正解数からCSEスコアで何点もらえるかが大事。
②その正解数(素点)とCSEスコアの換算レートはテスト毎変わる。
③換算レートは1次関数のような単純なものではない。おおよその傾向として、ボリュームゾーンといわれる合格点付近は細かに点数が刻まれ、最高点に近づくほど、1点当たりの増加量が増える。
④換算レートを出す方程式を明確にするのは難しい。経験則で平均値を出していく以外に良い方法があまりない。