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英検1級の要約問題で0点続出の理由。

2026年2月16日に英検の結果が発表されました。発表後数時間後から英検1級受験者の方で要約問題が0点だったとということで、話題になっておりました。2月17日付で出された英検協会の発表は、「評価に問題はない」とのことで、どうやら0点は正しいという判定のようです。
今回、どうして0点判定が出たのか少し考察していきたいと思います。あくまで今年の問題文と状況証拠的なものからの推論ですので、必ずしも正しいわけではありません。ですが、採点基準が大きく変わった点が実態としてありますので、来年度以降に受験する方もお気をつけいただくポイントがわかるかと思います。

状況説明:要約問題だけ0点が出ている。

まずは状況の確認です。ここではリンクを貼りませんが、2月16日の合否発表後にXを中心に要約問題が0点だったという内容の投稿がにわかに増え始めます。いわゆる英検クラスタといわれる英検1級合格をすでにされていて何度も受験されている方や中にはスコアを提示され、リーディング、リスニング85%以上、ライティングの意見論述は満点、という方でも要約問題が0点になっていました。さらに「私も0点」、「ちゃんと書いたのに0点」「要約問題から解いたのに0点」とこういった投稿が多くみられるようになります。

要約問題のスコアが0点になる場合とは

これまで要約問題が0点になること自体は起こり得ました。ライティング問題は、白紙で出した場合、必ず0点になります。また、1文しか書いていない、などの場合も0点になります。たとえ書いたとしても試験問題の内容にまったく沿っていない、枠外に書いた(枠外は判定されない)場合も0点です。ですので、0点自体はあり得ない話ではありません。しかし今回は①ある程度英語力がしっかりしている人、②要約問題を確実に書いたという人、が0点をとっているというのが異常事態といえます。これに対して、「英検協会がやらかした」「採点ミス」といった声も上がっていましたが、どうも違うようです。

0点の理由① 問題文の変更

2024年度から実施された要約問題ですが、実は2024年度と2025年度とで、問題文が異なっています。

2024年度版は以下の通りです。

こちらが2025年版。

違いが判りますか?

2024年度版は ● Suggested length: 90–110 words
2025年度版は ● Summarize it between 90 and 110 words.

となっています。それぞれ日本語に訳すと
2024年度版は 目安の語数:90〜110語
2025年度版は 90語から110語の間で要約しなさい。
となります。今回、この違いが採点基準を大きく変えたと考えられます。

英検の設問における命令文の意味

言っていることは「90語~110語の間で書け」というだけですので、そんなに大きな違いがないと思われますが、英語における「命令文」の意味はとても強く、基本的には「必ず守れ」ということを意味します。2024年版(Suggested length)はあくまで「目安」や「推奨」という柔らかい表現でした。一方で2025年版(Summarize it between…)は明確な「指示(命令形)」へと変更されています。これにより、「必ず90〜110語の範囲内に収めなければならない」という強いルールになったことが読み取れます。

準1級の問題でも同じような記述があり、意見論述の問題では以前から「Use TWO of the POINTS below to support your answer.」とありました。これは与えられた4つの視点から2つを必ず選んで応えないといけないという意味です。2級の意見論述の問題でも同様に3つの視点が与えられていましたが、あくまで参考のみで自由な視点で書いてよいと、問題文に指示が記載されていました。この2級の感覚で「4つの視点」あくまで使っても使わくてもいいのかと思って準1級で使わなかった場合、ほぼ点数がもらえません。ですので、まずはこの命令文を守るようにしなければなりません。

問題文変更のもたらしたもの

このように、問題文が変更されたことにより、「要約問題は、必ず既定の範囲内の語数で書きなさい」ということが指示として明確に出ていることになります。

結果として、第3回の英検1級問題で0点が続出した理由は「語数が足りなかった、もしくは超えていた」ために「タスク未達」として、0点になった、という推察が、最も正しいと思われます。

しかしここでさらなる問いが生まれます。2025年度から問題文が変わったのは第1回からです。もし第1回、第2回でも同じような採点がされていた場合、おそらくですが1級の要約問題で0点を取った人はもっと多かったのではないでしょうか。しかし、それなりに英検の動向を追いかけている英語スクールのものとしても、そういった話は全く聞きませんでした。もしかすると、第1回、第2回には受験者全員が語数を外さなかったということは、さすがにないと思います。ということは、第1回と第2回では、語数不足、語数オーバーの人がいたとしても0点とは判定されず、今回の第3回だけ、語数のミスに関しては厳しく判定されたことになります。

0点の理由② AIのアップデートによるもの?

前提として英検のライティング問題の採点にはAIが使われていると言われています。2019年に初めてそのことが定義され、本格導入は2023年の第2回からといわれています。ただし、子の採点に採用されているAIについては、独自のものなのか、GoogleのGEMINIやOpen AIのChat GPTのものをベースにしているのかなど、詳細は不明です。とはいえ独自のAIというのは、いくら受験者数を多数抱える英検とはいえ、自前で作れるものなのかよくわからないので(詳しい方教えてください!)、おそらくはGEMINIやChat GPTのようなすでにあるものをベースにカスタムしているのではないかと思います。そうなってくると、第1回、第2回と第3回の間に起こった大きなAIの出来事といえば…、そうです、GEMINI3.0のローンチです。仮説として、英検の採点AIにGEMINIがベースで使用されており、それらがアップデートを経て、より条件定義を明確に認識し、「タスク未達」と判断するようになった結果、第3回から0点が続出した…と考えると、諸々つながる気がします。

本当の問題点はAIではない…?

とここまで考えたところで、実際に専門家の人に聞きに行ければよかったのですが、そういうつてがあるわけでもなく、そこでやはり同じAIに聞いてみようということで、同じAIであるChat GPTに尋ねてみました。大まかには以下の流れです。


最近の英検1級の要約問題で、気になる変化があります。
2025年第2回(10月)までは、要約で0点を取る人はほとんどいなかったのに、
2026年1月実施の第3回では、0点がかなり多く出ているようです。
これはAI採点の厳格化、たとえばGeminiのアップデートの影響でしょうか?


ChatGPT
現時点で、英検協会が使用しているAIのモデル名(Geminiなど)は公表されていません。
ただし、AI採点の「運用ルール」が途中で変更された可能性は十分に考えられます。
モデルの性能向上そのものより、「0点を出す条件」が本格的に適用された可能性が高そうです。



実は問題文にも明確な変更があります。
2024年度までは
Suggested length: 90–110 words
だったのが、2025年度から
Summarize within 90–110 words
という命令文に変わりました。

ただ、2025年6月・10月(第1回・第2回)では0点はほとんど出ていません。
それが2026年1月(第3回)から急に増えた。この変化をどう考えますか?


ChatGPT
それはとても重要な観察です。
考えられるのは、2025年度が「移行期間」だったということです。

  • 第1回・第2回:
    問題文は新しいが、採点運用は旧基準に近い
  • 第3回:
    within 90–110 words
    タスク達成条件として完全適用

つまり、第3回から
「語数条件を満たさない=タスク未達=0点」
というゲートが本格稼働した可能性があります。



モデルがアップデートされると精度は上がりますよね。
では「厳格化」には、どの程度影響するのでしょうか?


ChatGPT
重要なのはここです。
モデル更新=自動的に厳しくなる、ではありません。

ただし、モデルが高精度になることで

  • 曖昧な答案を見逃さなくなる
  • 境界線(OK/NG)を細かく引ける
  • 「0点を出しても誤判定が少ない」状態になる

結果として、
人間側が厳格な運用を“実装できる”ようになる
という影響は非常に大きいです。

ということです。つまり、AIがアップデートされたことで、厳格に線引きされたのではなく、すでに人間側により新しく定義されていた採点基準をモデルがアップデートされることで、実用的に運用可能段階に入った。その結果が、第3回での要約問題0点が続出ということです。

とここまで比較的英検側の立場に立ってこの現象をみており、要約が0点になったのには、問題を読んでいない受験者側のミス、ともとれる書き方をしているのですが、当然それだけでは済まされないという思いもあります。具体的に以下の2点において、今回のこの判定はとても残念な結果といわざるを得ないと思っています。

疑問点① 同一期間中の採点基準の変更は許されるのか?

テストという公平性の点において、同一期間における採点基準をこれだけドラスティックに変更させるというのは、果たして良いことなのでしょうか。同じ試験要項・同じ指示文の下での、予告なき大幅な採点基準の変更は、本来あってはならないことだと思います。英検は高校・大学受験の合否や内申点に直結する非常に重要な(ハイステークスな)試験です。同じ年度の試験でありながら、「第1回・第2回に受けた人は語数の目安を少し外れても点がもらえた」のに、「第3回に受けた人は語数が1語足りない、多かっただけで0点になった」となれば、受験時期によって明確な不利益が生じます。これは標準化されたテストとして致命的な欠陥です。もちろん、「語数が1語足りない、多かったから0点」のくだりは、状況証拠による推論ですので、恥れている可能性はあります。しかし、明らかに、第1回2回で0点の人が出ていない以上、第3回だけ別の採点基準で採点されていることは間違いありません。

英検自体、TOEFLやIELTSに比べると安価とはいえ、1回の受験にそれなりの費用が掛かります。また受験回数も1級に関しては年に3回、本会場のみの受験と機会となっています。少なくとも頻繁に受けたいときに受けられる試験ではなく、今回だめだから来月の機会で頑張ろう、なんてなるようなテストではありません。この第3回にある意味人生を掛けて受験に挑んだ受験者もいたはずです。それが予告の無い採点基準の変更で不合格となれば(要約が0点の場合、他の2技能が満点、意見論述のライティングが満点でやっと合格点にCESスコアが到達できるかどうかです。そのためほぼ不合格になります)悔しい思いをされた方も多くいらっしゃると思います。

こういった点からも英検協会はしっかりと説明をすべきところだと思うのですが、ただ「採点に問題はなかった」と言い張るのは、少々受験者に対して失礼な印象は受けます。

疑問点② 実用英語技能検定における「実用」の意味は?

次に、英検そのものの在り方についてです。英検は「実用英語技能検定」の略ですが、実際に要約として見た場合、
90~110語指定 → 89語で内容も完璧に要約 
したものと
90~110語指定 →100語ぴったりだが主旨が抜けていて、 重要点がズレている要約
これらを比べたら、どう考えても89語の要約の方が「実用」的です。

しかし今回の採点では89語の要約は(おそらく)切り捨てられ0点と判定されました。今回私どものスクールでも1級を受け合格した高校生がいましたが、どの技能も何とか頑張りG1+1で合格した子の英語力と、リーディング、リスニングも9割以上取り、要約は0点でも意見論述は満点を取った先ほどの英語の先生とでは、実際の英語の運用力は明らかに後者の方があるように思えます。しかし、今回の英検の試験の上では、学生さんが合格し、後者の方が不合格という結果になってしまいます。

嫌な言い方ですが、今回の英検の採点基準のサイレント変更により、英検が測っているのは
「実社会の英語力」ではなく
「実用英語”試験”に適応できる能力」

となっています。英語の力を見ずに、採点の効率化だけに導入されたAIによるこんなものが「実用英語技能検定」と名乗ってしまっていいのかは、大きな疑問が残ります。実用性の一部(制約遵守)を過剰に重視し、実用性の核(意味の圧縮・伝達)を同列以下に置いている今回の英検の採点基準は結局は試験都合に最適化されているだけといえるでしょう。

まとめ

今回は英検1級の要約問題での0点が多数出たという現象から、英検採点基準について深堀してみました。推論に推論を重ねているため、本当の原因はもっと別のところにあるのかもしれませんが、少なくとも2025年度の第1回2回と第3回とでは異なる採点基準、ロジックが働いていることはほぼ間違いないと思われます。

一方で日々合格に向けて努力を重ねている生徒を導く立場として、今後の英検要約問題の指導において語数の厳守は徹底する必要があります。おそらく準1級、2級では要約問題のスコア0点がいなかったということからも、1級ほど厳しい採点基準となっていない(文字数不足/オーバー=タスク未達=0点)と思われます。ですが準1級の試験では、一部「構成」の観点が著しく低い事例があったため、おそらく大幅な語数オーバーは「構成」が0点に、既定の文字数から外れた場合は「構成」が1点となっていると思われます。英語のための学習というよりも、テストスキルを指導することになり、申し訳ないですが、このような些細なことで努力を無に帰すことがないように指導をしていきたいと思います。

今回のまとめです。
大変残念ながら、AI採点の導入と精度向上によって、英検の要約問題は
「書けば点がもらえる」試験から
「条件を満たさなければ0点になる」試験へと静かに移行しました。
その変化は、英語力そのものよりも
試験という枠組みに適応できるかどうかを、
より強く問うものになっており、英語試験の本質から外れていこうとしている。

ということで、今回の考察を終えたいと思います。

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