「英検3級でもWednesdayが書けない」はなぜ起こる?新中1から始める“書く”英語学習の重要性
先日、ネット上で話題になっていたある記事が目に留まりました。 『英検3級でも「Wednesday」が書けない!小中学生「《英検》先取り」の罠』というタイトルの記事です。
記事の要約を簡単に述べると、 「近年、小学生からの英検取得ブームがあるが、マークシート式の試験で『なんとなく合格』してしまった子は、中学生になっても曜日すら正しく書けないケースが多い。だから無理な先取りをせず、中3で英検3級程度を確実に取る目標で十分ではないか。そのうえで英検を『戦略的に未来を切り開くための道具』とすべきだ」 という趣旨の内容でした。
「英検合格が必ずしも英語力の証明にならない」という点において、私もこの記事の指摘には深く同意する部分があります。実際に、小学生の間に英検の級を持っていても、中学生になってから定期テストで振るわない、英語の授業で苦労をする生徒さんをたくさん見てきました。 しかし、そこから導き出される「だから中3で3級でいい(そこを戦略的ゴールとする)」という結論には、現場で指導する人間として「本当にそれでいいのだろうか」と、疑問を抱いてしまったのも事実です。
今回は、この記事を受けて、AIEが考える「本物の英語力の育て方」についてお話したいと思います。
「マークシート」と「記述」の決定的な違い
なぜ「Wednesday」が書けないのに、英検3級に受かってしまうのか。 それは、「4択から正解を選ぶ力(受動的な力)」と「ゼロから正解を生み出す力(能動的な力)」が全く別物だからです。
マークシート方式は、消去法や文脈の雰囲気で正解を選べてしまいます。しかし、記述式の問題(特に中学に入ってからの定期考査で出される問題)はそうはいきません。スペル、語順、時制、三単現のS……すべてを自分の頭でコントロールできなければ、正解にはたどり着けないのです。
これは実際に社会に出られている方であれば、よくお分かりかと思います。 例えば新商品の開発において、「正解の選択肢が4つ用意されていて、どれか1つが当たります」と言われたらどれだけ楽でしょうか。実際は何が当たるかわからない、「正解のない問い」に挑まなければならないから大変なのです。記述式のテストで答えを書くという行為は、これに近いものがあります。様々な可能性を考慮したうえで、最も適切なものを選ぶというプロセスがあるからです。
記事では「短期間での英検向け学習の弊害」として語られていますが、これは英検そのものの問題ではなく、「書く訓練(アウトプット)」を疎かにしたまま、「選ぶ訓練」ばかりをしてきた結果に過ぎません。
AIEで大事にしていること インプット3割、アウトプット7割
AIEでは、小学生から、日本語から英語にする「全文英作文」を行います。 最初は単語を書くだけですが、小2の中盤からは短いセンテンス(一部ヒントあり)になり、小3からは日本語から英語にすべて自力で書く形式に変わります。特に中1の段階からは、多くの時間を「全文英作文」に充てています。
穴埋め問題や並び替え問題だけでは、実際に英語を話すときにも困ります。何か言いたいと思ったときに、頭の中に並び変え問題のように英単語が降ってきたり、選択肢が表示されたりすることはないはずです。 「私は昨日、公園に行きました。」という日本語を見て、ピリオドまで全ての単語を自力で書かせる。これを徹底的に繰り返します。
当然、生徒たちは間違えます。「Wednesday」のスペルを間違えたり、時制を忘れたりします。しかし、教室で間違えることは恥ずかしいことではありません。
間違えて、赤ペンで直し、なぜ間違えたのかを考える。この「泥臭い修正のプロセス」を経た生徒だけが、テスト本番で迷わず正しく書けるようになるのです。
スペルミスは1文字でも違えば減点です。そこは厳しく見ます。しかし、生徒が一生懸命ひねり出した「別解」は、文法的に正しければ大いに認めます。同時に「この表現も覚えておいてね」と、より自然な「正答」も必ず持ち帰ってもらいます。 「書いて、間違えて、直して、また書く」という高密度のサイクルこそが、短期間で英語力を高め、知識を定着させるカギだと思っています。
また、小学生から通う生徒は、小6の段階で高校文法までの英語を一通り終えるようなカリキュラムになっています。 先のウェブ記事にもありましたが、週1回100分の授業を年間43回行ったとしても、単純計算で約70時間程度。言語習得には全く足りません。 ですが、小学生の間に「一通りの文法」を入れておくことで、中学生に入ってからの学習にスムーズに移行できます。中学に入ると、学校の授業も本格化し、追いかけてくる形になります。そこでより深く、より多量の英語を浴びることで、あやふやだった英語の知識が一つひとつ「実力」として固まってくるのです。
中学生で「英検2級・準1級」は不可能なのか?
こうした形で適切な指導を行えば、「中身がない状態で合格する」のではなく、「間違えない英文を書ける状態」で、小学生の間の英検2級取得は可能です。 また、中学から始めた場合でも、中2で2級(高校卒業程度)、進学校に通う生徒であれば中3で準1級に合格することは十分に可能です。実際にAIEでも、多くの生徒がそのレベルに到達しています。
彼らは決して「テクニック」で受かったのではありません。日々の「書くトレーニング」によって基礎体力がついているため、英検2級以上のライティング問題にも堂々と対応できるのです。
「高難易度を先取りしても意味がないから目標を下げる」のではなく、「難しいからこそ、正しいやり方で英語力を鍛えて、実力に合った級を目標にする」。それが私たちの役目だと考えています。
「思考の補助輪」としての講師
もちろん、級が上がれば上がるほど、英語力だけでなく「論理的思考力」や「抽象的な内容を理解する力」が求められます。特に大学入試を見据えた時、英語ができるだけでは太刀打ちできない壁も出てきます。
だからこそ私たちは、単に正解を教えるのではなく、生徒が自力で答えにたどり着くための「思考の補助輪」でありたいと願っています。 どう考えれば意見がまとまるのか、どうすれば伝わる英語になるのか。その「考え方」をコーチングすることで、生徒は自らの力で走り出します。
保護者の皆様へ
「英検を取らせても、実力が伴わないのではないか」と不安になる必要はありません。 大切なのは、「合格そのもの」を目的にせず、「書ける・使える英語力」を磨いた結果として合格を勝ち取ることです。
また、英検を取るという努力に対しては、大いに尊重し、その過程を認めてあげることが大事です。 英検が英語力の完全な証明にならないこと、これは深く理解しつつも、「英検○○級を持っているのに、こんなこともできないのか」と、我が子に対して厳しい目を向けてしまうことこそが、お子さまのやる気を削いでしまいます。
小さいころに積み重ねた努力、そして勝ち取った合格という結果。それと、中学生になり要求される英語力は「使う筋肉」が少しだけ違うのです。そのことを理解したうえで、「小学校のあいだもがんばったね、そしてこれからもがんばろうね」という気持ちで、お子さまの背中を押してあげてほしいと思います。
「早めに英語教育(英検)をしたのだから、その報酬(定期考査や入試での有利)が早く返ってきてほしい」と思うのは、親心として当然です。ですが、単純なギブアンドテイクの関係にならない点が、何よりも教育の難しい点です。
コストパフォーマンスやタイムパフォーマンス(コスパ・タイパ)を考えてイライラしてしまうこともあるかと思いますが、そこはぐっと飲み込んでみてください。お子さまが真に英語学習を楽しめる、達成感を感じられる環境を整えてあげることが、遠回りのようでいて、実はお子さまの成長にとって最も近道になります。
最後に
長々と書きましたが、「英検だけを取ればいい」と思うことも、「英検を取っても英語力はない」と断罪してしまうことも、どちらも一部正しくはあるものの、結局は「当事者であるお子さまが不在のまま、親の目線・教える側の目線」での議論にすぎません。
大事なことは、英語を学んだことでお子さまの人生が少し豊かになり、自信と誇りを持って過ごせるようになること。そんな「英語との付き合い方」を、保護者の方と一緒に見守れる環境を作り出していきたいと、強く願っています。
